ジャックラッセルテリアという犬種は好奇心旺盛である。何でも覗いてみたいし、咥えてみたいのだ。トピも机の上に置いてあるものを、手を上手く使って咥えて行く。誤飲を避ける為に、届かない場所に片付けるように注意しているのだが、うっかり落としたりした時、拾い上げる前に掻っ攫って行くときの素早さは、目にも留まらぬと言っても過言では無い。そして直ぐにこちらも取り返すべくして行動に移すのだが、取れるものなら取ってみろと、一定の距離を置いて鬼ごっこ状態が暫く続くのだ。もはやこれも彼にとってのゲームなのである。こちらの動きも緩慢なので、なかなか取り返せない。しかし、人間の知恵にはやはり敵わない。オヤツを持って行き、「交換しようか」と交渉するのだ。大体はこの作戦で解決する。素直な性格だからこそ通用する方法だ。
好奇心旺盛だが、警戒心も強いようだ。ちょっと怖い時は、片足を少しあげて立ち止まる。そして暫くジッと観察する。散歩の途中で、反対側の歩道にいるチラシの配達人を発見した時、「あの人は何をしているのか」と植栽と植栽の間からコッソリと覗いていた。こちらから見ると頭隠して尻隠さず状態なのだが。
早朝、小学校のグランドに、人がいるのを発見した時もかなり驚いていた。
さぞかし謎な行動をしているように見えたのだろう。その日は運動会のため準備をしていたのだ。丁度グランドで、ライン引きを数人の先生方がしていた。長いこと飽きずに作業の様子を眺めていた。小学校には飼育小屋があり、兎が歩道から見える。彼に兎の事を教えてあげてからは、猟犬の血が騒ぐのか、足を止めて小屋を観察するのを楽しみにするようになった。しかし、その日は兎の事も忘れるぐらい、グランドの人達に心奪われたようだった。